2025.01.17
「ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会」はジャコウアゲハを通して姫路を魅力あふれる街にするため、2013年に設立されました。
姫路市は平成元年(1988年)に市政100年を記念してジャコウアゲハを姫路市の蝶に制定しました。「市蝶」を制定している都市はとても珍しいそうです。ジャコウアゲハを通じた取り組みは非常に多岐にわたり、ジャコウアゲハや姫路市に対する想いをたくさん聞くことができました。
ここではそんな活動の一部を紹介します。
主な活動内容
①小学校へのジャコウアゲハの飼育セットの提供や出前教室 |
②自治体や企業、諸団体と連携したジャコウアゲハの生育環境の整備 |
③ジャコウアゲハの生態や食草の情報収集や研究 |
④企業や学校、諸団体によるサミットの開催 |
ジャコウアゲハが唯一食べるウマノスズクサ
上田さんはジャコウアゲハの食草を自身で育成する活動をしているとのことで、そちらに案内していただきました。ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサしか食べません。そのため農作物に害を与える事がありません。しかし、ウマノスズクサは種が出来にくいため、人工的に増殖する事が重要です。上田さんはこのウマノスズクサの最適な育成方法について独自で研究し続けています。上田さんの育てた苗は姫路市農業振興センターに運ばれ、充分な大きさになるまで育てられます。

農業振興センターではたくさんのウマノスズクサと、ジャコウアゲハの幼虫やサナギを見ることができました。サナギの形は姫路に伝わる播州皿屋敷のお菊さんが後ろ手に縛られている姿に似ていることから、「お菊虫」とも呼ばれています。これは市蝶に制定された理由の一つです。農業振興センターで育てられたウマノスズクサは小学校に配布され、ジャコウアゲハを育てる授業の教材として使用されています。2023年度は姫路市内の53校に配布されました。

姫路市山田町の里山
今回は姫路駅前でのジャコウアゲハを飛ばすイベントへも参加させていただくことに。姫路駅前に向かう道中、姫路市山田町の里山にも案内していただきました。少し高いところから見渡す風景は一面の田んぼと綺麗な青空が広がっていて感動しました。この里山は、上田さんをはじめ地元の方々が管理をしてできたもので、夏の夜には多くのホタルが飛んでいるそうです。上田さんは「人の手が入ってはじめて里山といえる、田んぼや里山を守ることが生物多様性の保全につながる」と教えてくれました。

たくさんのジャコウアゲハが集合
イベント会場に到着しました。
ジャコウアゲハの成虫は10日ほどしか生きられないことや、体にオレンジ色の警戒色をまとうことで、天敵から身を守っていることなど、種の繁栄のためにされている工夫を参加者の皆様と勉強することができました。イベントの最後は、それぞれが集めたジャコウアゲハを一斉に空に飛ばしました。多くのジャコウアゲハが飛んでいく姿はとても美しく、圧巻でした。
イベントに参加された方にお話を聞くと、最近では姫路市内でジャコウアゲハを見つける機会が増えたとも教えてくれました。また、ウマノスズクサを家で育てているとジャコウアゲハが自然と寄ってくるんだとか…。地域一体となってジャコウアゲハが暮らしやすい環境をつくっていることを実際に感じることができました。

(左:ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会 上田倫範さん 右:清元秀泰 姫路市長)
「ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会」、上田さんが取り組む活動に参加して
上田さんは個人的にウマノスズクサの育成に励まれており、その活動は企業や役所からの支援などもあり、現在まで活動を維持されてきました。また、姫路市ではジャコウアゲハを題材とした教育も積極的に行われています。上田さんの活動は企業・役所・教育委員会を巻き込みながら、市蝶であるジャコウアゲハを通じて、自然を守る事の大切さを子供たちに伝えたり、姫路市の魅力の向上に貢献しているということも分かりました。
道中で見せていただいた里山は、とても綺麗でした。しかし、人の手の入っていない「山」を「里山」に生まれ変わらせた苦労を聞くと、上田さんをはじめとした地元の方々の自然や生きものを守りたいという想いが強く感じられました。
きれいな自然の中にはたくさんの生きものがいること、そしてその自然を守っていくことや守る方法を知ることが、生物多様性を保全することにもつながりますね。
姫路ジャコウアゲハ俱楽部は「ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会」における研究調査機関という位置づけで設立されました。「ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会」ではジャコウアゲハを通じた教育への支援、街づくり、市蝶としての普及活動などを精力的に行っています。会長の上田倫範さんにご協力いただき、ジャコウアゲハの生態や自生地を案内していただきました。