2024.01.31
NPO法人富山県自然保護協会は、2022年で60周年を迎えた団体です。元々は立山黒部のアルペンルート開発の際に環境へ与える影響を調査するために設立されました。
県定公園「立山山麓家族旅行村」の杉林の一角に長い間雑木に覆われていたために存在が知られていなかった“ミズバショウ”の自生地がありました。
ミズバショウの自生地が荒廃していくのを防ぐため、保全活動を行っています。また、周辺の名勝地で自然観察を行うことで、観光客の誘致にもつなげています。
ここでは、そんな活動の一部を紹介します。
主な活動内容
①立山山麓家族旅行村のミズバショウ自生地保全 |
②「百間滑(ひゃっけんなめ)」や「龍神の滝」での自然観察会・トレッキング |
③富山県「富山県自然解説員(ナチュラリスト)」の養成講座実施 |
④天狗平ヘリコプター墜落跡地の植生復元 |
⑤情報誌の発行 |
旅行村内の湿原でミズバショウの生息環境を調査
朝の澄んだ空気を吸いながら、立山駅から山あいを30分ほど歩くと本日の集合場所である「ホテル森の風立山」に着きました。今日は”ミズバショウの保全活動”と”百間滑までの自然観察”ということで20名参加していました。ミズバショウの自生地は意外にもホテルの敷地から道路の反対側という近さで、ホテル森の風立山からも理解を得ながら活動を進めているとのことでした。
![image](/environment/fund/harmonist_fund/pickup/img/16/img_01.jpg)
湿原内にミズバショウの株がありましたが、それと同時にイノシシの足跡も発見。
2015年からミズバショウの保全活動を行っていますが、2020年からはイノシシが侵入しミズバショウの自生地が荒らされるようになってしまったとのこと。
確かに湿原内にはイノシシが泥浴びをするぬた場と思われる箇所が点々とあり、かじられたミズバショウもありました。
イノシシが侵入する前のミズバショウ自生地の様子
イノシシにかじられてしまったミズバショウ
イノシシからミズバショウを守るために新たな取り組みを実施
メッシュを敷くことで、猪が土地を荒らすのを軽減できる効果があると富山県内で報告がありました。
そこで、ミズバショウの自生地にメッシュを設置。
メッシュの材質は、環境にも配慮して錆びていずれ自然に還る鉄を使用。参加者全員で協力してメッシュをミズバショウの自生地まで運び、ミズバショウを傷つけないように被せました。
![image](/environment/fund/harmonist_fund/pickup/img/16/img_04.jpg)
自然観察会
午後は、保全活動に参加したみなさんと道中の動植物を観察しながら「百間滑」へ。色々な動植物や立山の地層の成り立ちに関する自然保護協会の方の説明を聞くことで、立山の自然に対する理解がより一層深まりました。
「百間滑」は「龍神の滝」下流200メートルにわたって水が岩肌を流れており、しかもその岩肌の地層は中生代。恐竜が生きていた1億年以上も前の地層とのことで歴史を感じました。
ミズバショウの保全活動に参加して
前泊の必要があり、富山県の立山駅に着いたのは夜8時ごろ。あたりは真っ暗でどんな景色かまったくわかりませんでしたが、朝になると胸がすくような雄大な自然の中にいることに気付きました。
ミズバショウをまじまじと観察したことはなく、今回の自生地も湿原の中ほどにあると思っていたら、案外人の居住区から近くて驚きました。
時節柄花を見ることはできませんでしたが、みなさんの頭の中ではかつての豊かなミズバショウ自生地が広がっているようで、”もう一度あの時のようなミズバショウの自生地を取り戻したい”という真摯な思いで保全活動に取り組まれている様子を感じました。
自然観察会では雰囲気が一変し、みなさん道中の植物や虫を見ては特徴を言いあったりととても和やかな雰囲気で「百間滑」まで散策する様子が印象的でした。みなさん富山県の自然観察員(ナチュラリスト)養成講座を受け持ってらっしゃって説明も丁寧かつ知識豊富で子どもから大人まで楽しめる観察会だと感じました。
近年クマやシカ、イノシシと人との境界線が薄れてしまい、事故も散発していますが、豊かな自然からの恵みを分けてもらうことで、人間は生きていけるという謙虚さを持って自然と接したいなと思います。
富山県独自のプログラムである「富山県自然解説員(ナチュラリスト)」の養成講座や立山黒部アルペンルートの自然観察ツアーを担当するなど富山県の自然の素晴らしさを伝える活動を精力的に行っています。
その一環として行っている「ミズバショウの保全活動」に参加し、実際にみなさんのお話を伺いました。