宝グループ中期経営計画 2030

[2026年度-2030年度]

「宝グループ中期経営計画 2025」の振り返り

「宝グループ中期経営計画 2025」では、「成長・強化領域への投資を加速させ、企業価値を高める3年間」を経営方針に定めました。
主な重点戦略としては、“ROIC 経営の浸透を通じた、成長・強化 領域への投資”や、「日本食文化(和酒・日本食)の世界浸透推進」と「ライフサイエンス産業のインフラを担うグローバルプラットフォーマー」という“宝独自の2つのビジネスモデルの確立・強化”などを掲げました。

上記の方針のもと、成長事業である海外日本食材卸事業やバイオ事業を中心に、多額の投資を行ったものの、目論見通りの成果が獲得できず、計画値には大きく未達で4期連続の営業減益となり、WACCや株主資本コストを大きく下回るROIC・ROEの水準となりました。 このような結果となった原因は、事業環境の急速な変化に対して十分かつ柔軟に対応できなかったためであり、事業に対するマネジメント体制の課題が顕在化しました。

「宝グループ中期経営計画 2030」の戦略骨子

本中計では、グループガバナンスや事業に対するマネジメントの体制・運用等の見直しにより、各事業における投資を適切に行うための経営基盤を強化してまいります。そして、バイオ事業と海外日本食材卸事業の収益構造改革による再構築・立て直しの取り組みを速やかに進めてまいります。

加えて、酒類事業では、宝グループならではのアセットやネットワークを組み合わせた様々なアプローチからの取り組みを通じて、グローバルな和酒拡大を実現できるビジネスモデルや商品戦略を具体化し、コア事業としての中長期的な成長力や持続力を高めてまいります。

また、タカラバイオを完全子会社化するメリットをフルに活用して、バイオテクノロジーの活用を中心とした新たな価値創造に向けた取り組みを加速させ、新規事業の創出や既存事業の強化・拡張など、中長期的な成長の道筋を具体化させていきます。

「宝グループ 長期 Vision 2050」と
「宝グループ中期経営計画 2030」の関係性

宝グループ 長期 Vision 2050」(以下、長期 Vision 2050)は、不確実性の高い環境下において、宝グループが事業を通じて提供したい価値や目指したい存在感などをより長期の時間軸で示したもので、2050 年度(2051 年 3 月期)を最終年度としています。

本中計は、その達成に向けた大まかな道筋を示したうえで、バックキャストアプローチで、直近のマイルストーンとすべき目標を設定し、達成に向けた具体的な戦略や計画を示すものです。

長期 Vision 2050
宝グループの「アイデンティティ」の図

「宝グループ中期経営計画 2030」の概要

全体方針

事業ポートフォリオ戦略を支えるグローバルな経営基盤を早期に整備することで、 成長軌道へと回復させるとともに、長期的な成長の道筋を確立する

  • ~2028年3月期 前半2年間
    体質転換/立て直し/将来への布石
  • ~2031年3月期後半3年間
    成長スピード加速/将来の成長ドライバー創出

本中計では、前半2年間を「体質改善/立て直し/将来への布石」、後半3年間を「成長スピード 加速/将来の成長ドライバー創出」と位置づけ、前半2年間で課題解決に向けての道筋をつけ、 成長軌道への回復の実現と、長期的な成長の道筋を確立する5年間とする

財務目標

指標 2031年3月期 目標値
ROIC 7%以上
ROE 10%以上
営業利益 378億円以上
売上高 4,930億円以上

(参考:2028年3月期)

  • ROIC 4.3%、ROE 6.1%
  • 営業利益235億円
  • 売上高4,290億円

財務方針

  • これまでの成長・強化領域への投資効果の獲得により営業キャッシュフロー創出力を強化し、 既存事業の効率性や新規事業創出に向けた投資を実行する

  • 有利子負債の活用と政策保有株式・ノンコア不動産売却を原資とした株主還元策により資本コストを低減する

  • 累進配当を導入し、5 年累計で総還元性向 50%を基本方針とする

  • 自己株式取得は、成長投資とのバランスを勘案して機動的に実施する

基本方針

長期 Vision 2050 実現に向けた事業ポートフォリオ戦略
  • 市場ステージや資本効率、競争優位性の観点から、事業ポートフォリオを下記の位置づけに分類する

    位置づけ分類/内容 事業ユニット
    コア 売上・利益を安定的・持続的に成長させる事業 和酒、試薬(立て直し)
    キャッシュ 高い収益性を維持する事業 洋酒
    成長 高い成長率を目指す事業 日本食(見極め)
    問題 資本効率、競争優位性ともに問題がある事業 CDMO(見極め)、遺伝子医療(見極め)
    創出 将来の「成長」を生み出すための投資 新規事業
  • 成長軌道への回復に向けて、まずは「問題」と位置づける事業の一部撤退を速やかに行う

    • ①遺伝子医療における遺伝子治療の自社臨床開発プロジェクト中止
    • ②CDMO における GMP 細胞加工受託からの撤退
  • その上で、以下の「見極め」を中心に、事業ポートフォリオ戦略を早期に(2年以内を目途)見直す

    • ③日本食を成長事業として位置づけ続けるか
    • ④CDMO、遺伝子医療を継続するか
事業
ユニット※1
市場
ステージ
資本
効率※2
競争
優位性※3
位置づけ 事業の方向性 経営資源
投下方針
和酒 国内:
成長期

海外:
成長期
コア

安定的・持続的な成長に向けて、競争力の維持・向上に必要な国内の製造拠点への投資を吸収できるように収益構造へと改革するとともに、グローバルな和酒・調味料拡大戦略のブラッシュアップによって海外での和酒市場想像力を強化する。

事業の競争力を持続するための適正な投資
洋酒 成熟期 キャッシュ

中長期的なブランド力の向上・確立を進め、成長投資の源泉であり続ける。

ブランド力強化へ選択的投資
日本食 成長期 × 成長
(見極め)

営業利益率の向上に向けたマネジメント強化により、これまでの成長投資の成果を確実に獲得し、資本効率を伴った事業成長へと回復させる。

営業利益率の結果や活動の内容に基づき、成長事業としての位置づけを見極める。(③)

収益性を高める投資を優先
試薬 成長期 コア
(立て直し)

BtoB領域の拡大に加え、強みを活かした高付加価値商品/新商品の開発・育成(Spatial、診断薬等)により、競争力を回復させる。

研究開発費の選択と集中
CDMO 成長期 × ※4 問題
(見極め)

一部領域からの撤退・中止等による固定費の抜本的削減等による構造改革を速やかに実施する。

  • ・遺伝子医療:遺伝子治療の自社臨床開発プロジェクト中止(①)
  • ・CDMO:GMP細胞加工受託からの撤退(②)

その上で、今後の両事業の採算性・競争優位性から継続可否を見極める。(④)

追加投資は最小限
遺伝子医療 成長期 × ※4 問題
(見極め)
新規事業 (成長期) - - 創出

CVC投資やスタートアップ投資も行いながら、バイオテクノロジーの活用を中心とした新規事業のアイデアの創出や新たな技術/アセットの探索により、新規事業を上市する。

基準に則ったスピード感ある投資
  • 事業ユニットとは、「酒類・日本食材領域」「ライフサイエンス産業支援領域」「新規領域」を事業内容別に細分化したもの
    • ・酒類・日本食材領域・・・和酒、洋酒、日本食
    • ・ライフサイエンス産業支援領域・・・試薬、CDMO、遺伝子医療
    • ・新規領域・・・新規事業
  • 資本効率は、2026 年 3 月期実績に基づく評価
  • 競争優位性は、事業規模、シェア、ブランド力、技術力、独自性、ビジネスの持続性等の情報も踏まえた現時点の評価
  • ▲は、現状のビジネスモデルでの評価は×だが、構造改革により評価が変わる可能性を示すもの
グループガバナンス/マネジメント体制の見直し
  • 資本市場の視点から、事業の変化を見極めた上で、経営資源の投下/配分方針を継続的に見直し、議論を行う経営会議体を新たに設置する

  • 上記方針に基づいた経営資源の投下を適切に行うために、投資案件を中心に、経営会議体の設計や運用を見直す

    • ・重要な投資の意思決定プロセスの見直し
    • ・投資結果に係るレビューの充実
    • ・タカラバイオに対するガバナンス体制見直し
ROIC 重視の再徹底
  • 営業利益だけではなく、事業ユニット別に WACC に基づいた ROIC 目標を設定することで、 グループ全体として WACC を上回る ROIC 水準へと回復させる
  • 事業ユニット別 WACC および ROIC 目標と連動して、
    • ・NPV 評価のハードルレート(割引率)を設定し、成長投資の実効性を高める
    • ・グループ各社の経営層の評価体系や報酬体系を必要に応じて見直し、 ROIC や資本市場に対する意識を高める
  • 各事業における収益力強化、投下資本適正化の両輪での取り組みにより、2026 年 3 月期対比 で ROIC を 4.0%(2031 年 3 月期)向上させる

    収益力強化
    • 日本食における高利益商材の拡売(水産品・調味料)
    • 日本食における業務オペレーション改善、設備投資による販管費率低減
    • バイオにおける構造改革による固定費の削減
    • バイオにおける BtoB 等を中心とした試薬の売上の拡大
    • 和酒における国内の収益構造改革
    • グローバルな和酒/調味料の拡大に向けた新商品開発やブランド育成
    投下資本適正化
    • 日本食・CDMO・遺伝子医療の「見極め」を行った上での成長投資
    • 適正な水準での国内の設備投資計画の確実な実行
    • 各事業における、在庫圧縮や売上債権・棚卸資産回転日数の短縮
    • 政策保有株式やノンコア不動産の売却
既存事業の収益構造改革
タカラバイオ
抜本的な固定費削減策や資産の圧縮等を速やかに実行し、収益構造を改革する
  • 遺伝子治療の自社臨床開発プロジェクト(TBI-1301 等)の中止
  • GMP 細胞加工受託からの撤退
  • 人員削減(単体人員▲120 名の想定)
  • スウェーデンサイトの閉鎖
  • 遺伝子・細胞プロセッシングセンターのランニングコスト(保守費等)抑制
  • その他コストダウン施策
試薬の商品・顧客ポートフォリオの転換と連動した R&D ポートフォリオ管理を行う
  • 最大市場である米国を中心に、 BtoB モデルを強化・確立し、顧客構造をアカデミアから 企業へ(研究用途中心から産業用途中心へ)とシフトする
  • BtoB カスタム品・Spatial の開発へ R&D の重点をシフトしつつ、商業化への近接度を軸と した R&D ポートフォリオ管理を徹底し、研究開発費増加を抑制する
和酒
中長期的な競争力の維持に向けて、国内製造拠点への計画的な投資を実施するとともに、国内では固定費等の削減やブランド育成等による収益構造改革、海外では輸出拡大を中心とした和酒市場創造力の強化で、持続的成長の道筋を確立する
<国内>
  • 工場への計画的な投資(国内製造拠点への投資:254 億円)
  • その他固定費や販管費などの全社的なコストダウン・経費削減
  • 新商品開発/重点ブランド育成
  • 輸出の柱となる商品を複数開発
<海外>
  • 宝酒造との協業体制の深化により、輸出拡大に向けた商品開発に注力
  • これまで以上に多様なアプローチからの新たな商品開発や販売戦略
  • 地域、商品、営業、チャネル等の観点から「勝ち筋」を探索・確立
グループシナジー発揮による成長の道筋の確立
グローバルな和酒・調味料拡大戦略のブラッシュアップで和酒市場創造力を強化・ 拡張する

宝グループが持つ、酒類・日本食材領域における様々なアセット(地域・商品・営業・チャネル等)を組み合わせることで、調味料も含めて多様なアプローチからのグローバルな事業拡大にチャレンジし、コア事業として中長期的な成長力を高める

新規
アジア戦略の再構築
  • 香港と日本で分散していた営業拠点を本社に統合し、アジア販売戦略を一元管理(現地生産型から輸出中心型へシフト)
調味料カテゴリーの拡張
  • 日本食材卸のポテンシャルを活かしたグループ共通の調味料ブランド「京寶」の開発・育成(OEM 含む)
洋酒の販路の活用
  • 日本食レストランとは顧客層の異なる(アッパー層の)販売ルートを活用した高付加価値 商品の開発や拡売
国内企業との協業
  • 国内 BtoB 得意先・日本食材卸の仕入先である国内食品メーカー等との協業
既存強化
国内のブランド力を活かした輸出拡大
  • 国内における重点ブランド/新商品の継続的育成
  • 「澪」のグローバル化のさらなる推進
  • 「昴」など国内注力ブランドを第2の柱となるグローバル商品育成
国内の技術力・製造力を活かした輸出専用商品の開発
  • RTD、和リキュールなど海外専用商品の開発
海外日本食材卸の活用
  • 日本食と和酒のセット提案による拡大
バイオテクノロジーをコアコンピタンスとした新規事業開発と既存事業を強化・拡張 する

社内におけるアイデア創出(starTreasure)やグループ内の技術・アセットの深堀りに加え、CVC※1運営・LP※2出資等を通じた社外の新たな技術・アセットの探索に取り組み、本中計期間内に新規事業を上市(目標:2 件)

  • CVC(Corporate Venture Capital):自社資金を活用してスタートアップ等に投資する仕組み
  • LP(Limited Partnership):ファンドへの出資を通じたベンチャー投資活動

基本方針と連動した人的資本の活用(人財・組織風土)

人財
コーポレート人財の強化
  • ジョブローテーションを中心とした人財育成と専門人財の獲得(キャリア採用・専門学校)
  • 新規事業開発に向けた人財育成投資
  • DX人財の育成
グローバル人財の強化
  • キャリア採用や新卒採用による人財の獲得
  • ジョブローテーション、教育研修等による継続的な若手社員の人財育成
次世代を担う人財育成および適材適所の配置
  • 人財ポートフォリオ作成による人財リソースの見える化
  • グループの次世代を担う経営幹部候補の育成
組織風土
宝グループ全体で社員が交流できる場や機会の創出
  • 組織横断型ワークショップの開催によるグループ間の相互理解とグループ共通の組織風土の醸成
  • 社内インターン制度による他組織の業務経験を通じた、個人のスキルやモチベーションの向上と一体感の醸成
宝グループ全体で社員同士が
情報交換・共有できる仕組みの構築
  • 経営層のメッセージ、事業・職場紹介等、各社の情報が共有でき、多言語翻訳が可能な Webプラットフォームの導入による各社の相互理解の深化

宝グループのサステナビリティの取り組み

「長期 Vision 2050」と連動する形で、「新規領域での価値提供」という新たなマテリアリティ(重要課題)を追加

マテリアリティマトリクス