1985年設立 タカラ・ハーモニストファンド助成先の自然保護活動

「ずっと続く、自然への恩返し」

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2019.12.25

豊かな自然のあるまちを未来の子どもたちに伝える

NPO法人つくば環境フォーラム

「自然と人との共存」をテーマに、筑波山と山麓から平地林までの豊かな自然のあるまちを未来の子どもたちへ伝えるため、保全活動と教育活動を展開しているのが、特定非営利活動法人つくば環境フォーラムです。
さまざまな生き物調査から自然観察会、お米づくり体験など、約60にも及ぶ充実したプログラムには目を見張るものがあります。
ここでは、そんな活動の一端を紹介します。

主な活動内容(NPO法人つくば環境フォーラム)

筑波山自然展など 筑波山での環境教育事業
筑波山の植物調査・観察会 筑波山ファンクラブの運営
筑波山麓自然学校 自然体験や里山文化を学ぶ講座(つくば市事業)
谷津田再生事業 生き物と共存する米作り
水源の森づくり 里山整備
オオムラサキの棲む里山づくり 国蝶オオムラサキのレスキューと平地林整備
葛城大規模緑地の里山整備 市民協働の里山整備(茨城県事業)
里山ワンダーランド探検隊 親子の自然体験活動
しぜんっこくらぶ in ゆかりの森 幼児親子の自然体験教室
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タカラ・ハーモニストファンドが、NPO法人つくば環境フォーラムの「田んぼの生き物レスキュー隊(工事等によって変わりつつある田んぼの環境に生き物たちが住み続けられるための環境整備と教育活動)」に助成したのは、2003年のこと。
久しぶりにホームページを見ると、活動地域・領域が大幅に広がり、活発に活動されています。
どのようにして活動を拡大発展させてきたのかをお伺いし、また活動はどのような感じなのか肌で感じたいと思いました。
そこで、数あるプログラムの中から、生き物と共存する米づくり「谷津田再生事業」のひとつである“筑波山麓すそみの田んぼ「収穫祭」と田んぼの生き物観察会”に参加し、代表の田中ひとみさんからお話しを伺いました。

自然豊かな筑波山麓「すそみの田んぼ」

台風が次々と関東地方を襲い、開催前日も雨が残る不安定な天気が続く中、10月26日(土)に開催された“筑波山麓すそみの田んぼ「収穫祭」と田んぼの生き物観察会”に参加しました。
場所は、筑波山麓の自然豊かな「すそみの田んぼ」。
前日とは打って変わって青空が広がり、気持ちの良い朝を迎えました。

imageすそみの田んぼの向こうに筑波山が望まれる

開催会場である「すそみの田んぼ」に到着すると、すでに何組かの参加家族が到着していました。
昨年から参加し始めたというご家族。子どもさんは、到着するなり、網を片手に生き物獲りにまっしぐら。お母さんにお話を伺うと、子どもさんはここに来るのをとても楽しみしていて、今では月1回のペースで訪れるようになったとのこと。「着替えはひとつでは足りなくて、2つ3つ持ってきている」と笑いながら話されていました。

image各自、思い思いに生き物獲り。生き物は、あとで自然に返します。
image捕まえたタイコウチを掌に乗せて見せてくれました。
imageサワガニを見つけた女の子。「カニに触ったのは初めて!」と嬉しそう

カエル、タイコウチ、ガムシ、サワガニ、ショウリョウバッタ、カマキリなど、今日のプログラムが始まる前からたくさんの生き物に触れて満足そう。
実際、「用意されたプログラムに参加する楽しみが半分、たくさんの生き物に触れる楽しみが半分」とおっしゃる家族もあり、豊かな自然に触れられることも大きな魅力になっているようです。

「収穫祭」

いよいよ「収穫祭」の始まりです。
約90名の参加者にスタッフ、ボランティアを加えた総勢113名。
代表の田中ひとみさんの挨拶のあとは、大人も子どももすぐに、餅つきや焼き芋などの準備に入ります。
大人に混じって、子どもたちも率先して準備の手伝いをします。

image代表の田中ひとみさんの挨拶のあとは、それぞれの分担に分かれて収穫祭の準備に入ります。
  • image井戸の水汲みは子どもたちに人気の作業。
  • image火加減を調節。
  • image焼き芋用の竹や枯れ枝を運ぶ子どもたち。
  • image焼き芋用の火を熾すボランティアで参加の大学生。
  • image餅つきに思わず力が入ります。
  • imageどこまでも伸びるつきたてのお餅。

生き物観察会

お餅を食べた後は、「水辺の観察」と「里山の観察」の2グループに分かれて、生き物観察会です。私は里山の方に参加しました。
田中さんの説明に耳を傾けながら里山の生き物を観察します。途中、サルナシの果実を取って、みんなで食べてみました。味は、「キウイフルーツにそっくり!」と思ったら、キウイフルーツはサルナシの仲間を品種改良したものだそうです。

  • image田中さんの説明に熱心に耳を傾ける参加者の皆さん。
  • image里山を移動していくだけでも良い気分転換になります。
imageサルナシの果実。
image熱々の焼き芋を家族で分けていただきます。

生き物観察から帰ってきたら、焼き芋が良い具合に焼きあがっていました。盛りだくさんのプログラムはこれで終了。みんなの満足そうな笑顔が印象的でした。

“筑波山麓すそみの田んぼ「収穫祭」と生き物観察会”に参加して

お話を伺ったほとんどの人が、初めての参加ではありませんでした。
このようにリピート率が高いのは、満足度が高い証拠です。また、参加者はつくば近郊に住んでいる人だけでなく、東京方面からも来られるそうです。
つくば環境フォーラムでは、今回の活動をはじめ、年間約60回もの活動を行っています。これは、驚くべき回数です。
田中さんは、「NPO法人の設立当初から、持続可能なことを意識して進めてきた」と言います。
このため、保全活動と環境活動を並行して実施する自主事業に加え、つくば市や茨城県からの委託事業を受託したりするなど、活動領域を広げてきています。2歳くらいの幼児が参加するプログラムからお年寄りまで、幅広い人を対象としたプログラムが揃っています。
参加者の満足度も高く、リピートする人も多くて順風満帆に見えますが、「スタッフが高齢化してきているのが悩み」だと言います。
若い世代に事業を引き継いでいくこと。これは、多くの団体が抱えている共通の課題です。
「近くにこのような体験ができるところがあって本当に良かった」今回のイベントに参加された方が漏らした言葉です。未来の子どもたちのためにも、事業が無事次世代へ引き継がれていくことを願ってやみません。

プロフィール

NPO法人つくば環境フォーラム代表 田中ひとみさん

長野県生まれ。1990年から牛久自然観察の森の開園当初のレンジャーを務め、2001年NPO法人つくば環境フォーラムの代表となる。「自然と人との共存」をテーマに、実践・育成・連携を三本柱として、筑波山やつくば周辺の里山で、自然環境の保全、自然体験活動の提供、地域交流活動等を展開中。
環境省自然公園指導員(水郷筑波国定公園)、つくば市文化財審議会委員(天然記念物担当)、環境カウンセラー(市民部門)。2009年全国植樹祭緑化功労者(林野庁長官賞)、2010年田園自然再生活動コンクール「オーライ!ニッポン賞」、2019年環境保全茨城県民会議功績者ほう賞を受賞。

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