1985年設立 タカラ・ハーモニストファンド助成先の自然保護活動

「ずっと続く、自然への恩返し」

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2019.03.27

「楽しく面白く」 大阪湾の環境再生に取り組む

大阪湾見守りネット

大阪湾を取り囲む地域には、大阪湾の環境問題に取り組むさまざまな個人や団体があります。そうした人々をとりまとめ、各自の活動を円滑にし、情報交換を行いやすくするプラットフォームが大阪湾見守りネットです。
設立から10年以上たつ現在も、いろんな活動を展開していることが、インターネット上でもわかります。具体的にはどんなふうに大阪湾と向き合っているのでしょうか。大阪湾見守りネットのスタッフの方にお話を伺いました。

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大阪湾見守りネットに参加している団体が開催している「チリメンモンスター探し」。
大阪湾で獲れるちりめんじゃこ(カタクチイワシ)に混ざっている他の生き物を探すこの「チリメンモンスター探し」は、大阪湾見守りネット設立当初に開始され、今も大人気のイベントです。
この「チリメンモンスター探し」の人気の秘密を知りたくて、宝酒造の社員も参加してみました。

チリメンモンスター探しに参加しました!

大阪府岸和田市のきしわだ自然資料館で開催された「チリメンモンスター探し(以下、チリモン探し)」。
「チリモン探し」は、ちりめんじゃこ(カタクチイワシ)の中に混じっている、カタクチイワシ以外の生き物を探すことです。見つかったモンスターは、資料を手掛かりにそれが何なのかを調べます。 大きいものはタチウオなど、カタクチイワシよりさらに大きいので、探すのはとても簡単。でも小さいものは目を凝らさないと分からないものも、たくさんいるようです。
参加しているのは小学生以下の子どもたち。皿に広げたちりめんじゃこの中から、次々とチリメンモンスターを探し出します。

  • imageオリジナルの『チリメンモンスターずかん』とチリモン探しの道具。これらを使って、今日はチリメンモンスター探しに参加します。
  • imageお皿の上にチリメンを広げ、モンスター探し。見つかったモンスターは「チリメンモンスターずかん」を利用して、どのチリモンかを確認します。

隣の席の子に「これは何?」と聞いてみると「ヘイケガニのゾエア!」など、すらすらとチリモンの名前が出てきます。保護者の方に伺うと、「もう何度も参加しています」とのこと。どうりで詳しいはずです。
小学生のころからチリモン探しに参加し、今日はワークショップのお手伝いをしているという中学生が、「珍しいのがいる」と嬉しそうに私の皿を見つめています。結局、私一人では探し出すことができず、彼に教えてもらって取り出したのは小さな巻貝。小さすぎて貝かどうかさえ見分けがつきませんでしたが、彼にはちゃんとチリメンモンスターだとわかったようです。
最初はなかなか見分けがつかなかったのですが、目が慣れてくるとだんだんと特徴が見えてきて、魚だけではなく、タコやエビ、シャコも見つかりました。
最後にチリモンを台紙の鮨下駄に貼りつけてチリモン鮨を作るのですが、いつの間にか鮨下駄に乗りきらないほどチリモンを見つけていました。まわりを見ると、子どもに付き添ってきたお父さんお母さんも一緒になってチリモンを探していて、「チリモン探し」は子どもも大人もリピーターになる人気イベントであることがわかりました。

  • image結構いろんなモンスターが見つかっていますね。
  • image見つかったチリモンを台紙に貼りつけてチリモン鮨のできあがり。

今日のワークショップのお手伝いをしている中学生が、小学生の頃に行った研究成果が、自然館の壁に貼ってあるのをみて、「チリモン探し」の奥深さを感じました。
ワークショップを担当してくださった、きしわだ自然資料館・専門員の藤田吉広さんも、「子どもたちに大阪湾には多様な自然があり、多様な生き物がいるということを知ってほしいと思っています」と話します。
こうした子どもたちが、これから大阪湾を身近に感じられるようになればいいなあと思いました。

  • image参加者が見つけたチリメンモンスターはホワイトボードに名前を書きだします。今日は30種類ほどのチリモンが見つかりました。
  • image資料館の壁にはチリモン探しのお手伝いをしてくれた中学生が小学生のときに行った自由研究の成果も。
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「チリメンモンスター探し」をはじめ、ユニークな取り組みを拡散している大阪湾見守りネット。どういう経緯で誕生したのでしょう?

大阪湾見守りネットの誕生

私たち大阪湾見守りネットは、2005年に誕生しました。この年、海(大阪湾)をきれいにしようという動きが生まれました(大阪湾再生プロジェクト)。海から私たちの暮らしぶりを見直そうという動きが、ここから始まったのです。
その動きの中で、「ほっといたらあかんやん!大阪湾フォーラム」が開催されました。大阪湾にかかわりのある市民団体や個人を中心に約140名が集まり、大阪湾おもしろ講座、パネル展示、交流会などを行い、フォーラムは大いに盛り上がりました。

image大阪湾見守りネット発足のきっかけとなった2005年の「ほっといたらあかんやん!大阪湾フォーラム」は、以後毎年開催されています。
写真は2016年3月に開催されたときの様子。

このフォーラムをきっかけとして、官民を問わず大阪湾の再生に関心のある個人や団体のプラットフォーム(交流と連携の基盤)として、大阪湾見守りネットを立ち上げました。
現在は約90の市民や市民団体、事業者や研究機関、行政などが大阪湾見守りネットに参画しています。面白いのは環境保護関連の団体ばかりではなく、歴史調査をする団体、釣りなどのレジャー団体など、さまざまな角度で大阪湾と関わりを持つ団体もメンバーであること。また、大阪湾沿岸にある多くの博物館が参加しているため、地域住民と直接的な交流が持ちやすいことが、大阪湾見守りネットの活動をアクティブなものにしています。

図大阪湾見守りネットの運営の仕組みと内容
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大阪湾見守りネットには、いろいろな個人や団体が加入しているんですね!
参加メンバーが、設立趣旨にあるように“楽しく面白くを基本に、自発的自立的に取り組”んでいることが、活発な活動の原動力となっているようです。
大阪湾見守りネットは、2012年にはタカラ・ハーモニストファンドの助成金を得て、約1年間で16ものイベントを実施しました。当時実施されたイベントは進化して現在まで続いているそうです。
イベントは現在、どんな風に発展しているのでしょうか?

大阪湾見守りネットがつなげて、ひろがる参加団体のさまざまな活動

タコをテーマにしたのは、大阪湾からは2000年前(弥生時代)に作られた世界最古のタコツボが見つかっていることや、食や産業の分野でもかかわりが深いなど、タコがこの地域で身近な存在だったからです。こうしたことから、子どもの学習にもタコを活用できないだろうかと考え、タコツボ作りを実施することにしました。タコツボ作りは好評で、その後何度も開催しました。さらにタコの解剖や大阪湾での磯の観察会など、タコをフックにさまざまなイベントを企画・開催しました。
現在では「タコツボ作り」は、泉南エリアの多くの学校で体験学習として取り入れられています。また、地元の漁師さんや漁業組合の協力も得て、実際にタコ漁やタコを料理するイベントにも発展しています。
発足10年以上もたつ大阪湾見守りネットの活動が盛んなのは、情報の壁がないからではないでしょうか。ある団体が行ったイベントが評判になると、大阪湾見守りネットを通じて他の団体にもどんどん共有しているからだと思います。(写真提供:きしわだ自然資料館)

  • imageタコツボ作りの様子
  • image手づくりしたタコツボは焼きます
  • image子どもたちがつくったユニークなタコツボ
  • imageタコの解剖の様子
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大阪湾の環境をよくしたいという気持ちでつながっている、大阪湾見守りネットのメンバーたち。そんなメンバー同士の交流が活発だから、さらに活動に広がりが生まれるのでしょうね。続いては10年続いている、「大阪湾生き物一斉調査」について伺いました。

大阪湾生き物一斉調査の開始と継続

大阪湾見守りネットが継続的に実施している取り組みに、「大阪湾生き物一斉調査」があります。これは2008年から毎年、5月か6月の大潮前に実施されている市民参加型の定点観測で、毎回大阪湾の全域、20か所以上で行っています。
この調査にも大阪湾見守りネットに所属する色々な団体が参加し、市民参加型の生物調査としては特筆すべきものと言えます。調査には大阪湾見守りネットのメンバーである博物館や専門家も多数支援してくれていて、調査結果は、信頼できる貴重な生物の定点観測データとなっています。(写真提供:きしわだ自然資料館)

  • image見つけた生き物がなにか、確認します
  • image子どものほうが、生き物を見つけるのは得意なのだそうです

調査の継続は、さまざまな面で苦労も伴いますが、市民が大阪の海に接することができる機会として、これからもできる限り継続していきたいと思っています。
調査の結果はデータベース化されており、「大阪湾生き物一斉調査情報公開サイト」で誰でも見ることが可能です。

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市民も参加できるイベントや調査を行っている大阪湾見守りネット。これからもますます活発な活動が期待できそうです。最後に、今後はどんな活動を考えているのか伺いました。

“なにわ(魚庭)” の海を世界に

大阪湾見守りネットでは、これまで多くの市民団体や公的機関と連携してきました。今後は関西エリアの民間企業とも、大阪湾の環境をよくするための新しい取り組みができればと考えています。
今後、取り組もうとしているのは“なにわ(魚庭)の海”と銘打って、大阪湾の魚をもっと知ってもらうことです。
ちりめんじゃこなどもそうですが、近海物の魚のおいしさを広めたいと考えています。ここ数年は大阪湾の魚を食べてもらうためのイベントなども行っていますが、時折「大阪湾に魚っているんですね!」という驚きの感想を聞くことがあります。現状ではそんな感想が出てくるくらい、大阪湾と沿岸住民の生活はかけ離れてしまっているのです。大阪湾岸は護岸がすすみ、天然の海岸線を大阪府民に割り当てると、一人あたりわずか1.5ミリほどにしかならないそうです。海水に触れられる場所があまりないことも、大阪湾が身近に感じられない人が多い理由なのかもしれません。
でも大阪湾に、今も多彩な魚が豊富にいるということは事実です。今後はこれまで以上に楽しいイベントを開催し、より多くの方に参加してもらうことで、こうした“魚庭(なにわ)の海”を身近に感じられる人を増やしていきたいと思っています。

image親子で参加できる、大阪湾の魚を使った料理教室は最近とても人気です。

プロフィール

大阪湾見守りネット

2005年、「ほっといたらあかんやん!大阪湾フォーラム」を契機に誕生。官民を問わず大阪湾の再生に関心のある個人や団体が会員となり、大阪湾再生に関する情報や交流のプラットフォームとして活動している。
大阪湾を多くの人に関心を持ってもらうため、「タコツボづくり」や「チリメンモンスター探し」などユニークなイベントも多数開催している。また、大阪湾生き物一斉調査は10年以上継続しており、大阪湾の貴重な生き物データベースとなっている。